「3分19秒差」
9区終了時点でのトップ創価大学との差。誰もがこの時点で創価大学の総合優勝を確信しただろう。
駒澤大学のアンカーは昨年の経験者石川選手、創価大学は三大駅伝初出場の小野寺選手。実力的には多少詰めることは想像できたし、59秒以上詰めれば青山学院大学次第で復路優勝の可能性があったため石川選手は区間賞と1分詰めることが目標だっただろう。
小野寺選手は確実に総合優勝するためゆっくりと入り、石川選手は自分のペースでタイムを刻んだ。
13.3kmの新八ツ山橋での差が「1分57秒」。このまま行ければ復路は駒澤大学が勝つことができる。1分半近く詰まったとはいえ小野寺選手もここからペースを上げて逃げ切るだろうと多くの人は思っていた。
しかし16.5kmの田町のタイム差を見たとき私の中で衝撃が走った。
「1分17秒」
まさか‥と思った。テレビに釘付けとなり、距離とタイム差を計算し始めた。約3kmで40秒詰めた、残りは6.5km。本当に微妙だなと思った。でも奇跡が起きる気がしてきた。
その奇跡が確信に変わったのが18.1kmの御成門の「47秒」。もう興奮しすぎて計算できてなかったが、小野寺選手の苦しそうな表情と石川選手のはつらつさからして駒澤大学の大逆転優勝が起こると確信した。
そして20.8km地点で追いつき、20.9km地点でスパートをかけた。
駒澤大学は13年ぶり7回目の総合優勝を果たした。
当然だがこの優勝は石川選手だけで勝ち取ったものではない。
1区から9区までの選手の活躍なくしてはあり得なかった。何より目立ったのが最後の粘りである。
1区白鳥選手は六郷橋で遅れてしまったが、何とか前に選手が見える状況で襷を渡した。2区田澤選手は日本選手権の疲れが残る中でなんとか耐えた。3区小林選手はいつもきつそうな顔に見えるが、本当にきつい中で区間2位と好走した。4区酒井選手は実力的に準エース区間では厳しかった中、順位を1つ上げた。5区鈴木選手は途中で東洋大学宮下選手に離されても下りで追いつき僅差の勝負を演じた。6区花崎選手はハイペースで飛ばして苦しい中、平地を耐えて57分台を記録した。7区花尾選手は後半原富選手に差を広げられる中、2分以内の差で抑えた。8区佃選手は序盤から徐々に差をつめ、遊行寺坂以降耐えて差を詰めた。9区山野選手は石津選手に優勝の決定打をほぼ打たれた状況でも僅かに可能性が残る差で耐えた。
この少しずつの耐えが10区の大逆転を生んだだろう。
そしてその耐える力を生み出したのが大八木監督の檄である。
「男だろ!」
大逆転する直前で行った言葉はやはり伝統の檄だった。
また何より大きかったのが谷間世代と言われた3年生の活躍。6区花崎選手と10区石川選手は区間賞を獲得した。下級生の多くは経験不足や長い距離にやや苦しむ中で4年生の小林選手と同じくらい3年生は頼りになった。来年のキャプテンは田澤選手でも、頼りになるのはこの谷間世代と言われた選手達だろう。
来年は経験者が9人も残り、外れた1年生の青柿選手や唐澤選手も強力なため当然優勝候補筆頭である。場合によっては三大駅伝三冠も夢ではない。ただ唯一と言ってもいい来年の課題は「追われるプレッシャー」に打ち勝つことだろう。優勝候補筆頭で挑むプレッシャーもだが、レース展開としても全日本大学駅伝・箱根駅伝ともほぼ追いかける展開だった。皮肉にも先頭を走りながら追われるプレッシャーが尋常ではないことは小野寺選手が改めて認識させてくれた。このプレッシャーに打ち勝つにはやはり最上級生の安心感が必要でしょう。
第97回箱根駅伝の結果(駒澤大学)
総合順位 1位(10時間56分04秒)
往路順位 3位(5時間30分29秒)
復路順位 2位(5時間25分35秒)
区間 | 選手名 | 学年 | 区間記録 | 区間順位 | チーム順位 |
1区 | 白鳥 哲汰 | 1 | 1:03:47 | 15位 | 15 |
2区 | 田澤 廉 | 2 | 1:07:27 | 7位 | 15→8 |
3区 | 小林 歩 | 4 | 1:02:22 | 2位 | 8→3 |
4区 | 酒井 亮太 | 2 | 1:04:09 | 11位 | 3→2 |
5区 | 鈴木 芽吹 | 1 | 1:12:44 | 4位 | 2→3 |
6区 | 花崎 悠紀 | 3 | 57:36 | 1位 | 3→2 |
7区 | 花尾 恭輔 | 1 | 1:03:55 | 4位 | 2→2 |
8区 | 佃 康平 | 3 | 1:04:48 | 4位 | 2→2 |
9区 | 山野 力 | 2 | 1:10:04 | 6位 | 2→2 |
10区 | 石川 拓慎 | 3 | 1:09:12 | 1位 | 2→1 |
ー | 唐澤 拓海 | 1 | |||
ー | 加藤 淳 | 4 | |||
ー | 青柿 響 | 1 | |||
ー | 円 健介 | 2 | |||
ー | 伊東 颯汰 | 4 | |||
ー | 神戸 駿介 | 4 |
まとめ
全日本大学駅伝・箱根駅伝と連続優勝を果たし、平成の常勝軍団が帰ってきました。
令和の常勝軍団になるためにはやはり来年が重要でしょう。
山区間が強力で2区も安泰。箱根駅伝連覇を果たすには1・4区でさらに良い成績を残したいところ。
エースでキャプテンとなる田澤選手に他の選手がどこまで迫ることができ、支えることができるかがカギでしょう。
厳しくも選手思いの強い大八木監督の挑戦はまだまだ続きます!
箱根駅伝総合結果はこちら↓
箱根駅伝2021 総合優勝は10区大逆転の駒澤大学!総合結果と来年大会の展望は?
区間エントリーおよび当日変更予想はこちら↓
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✔本記事の著者
箱根駅伝は小学生の頃から毎年見ており、初代山の神今井正人選手の活躍から知っている
ハーフのPB:1時間25分28秒
フ ルのPB:3時間37分59秒